見てきました 映画「杉原千畝 スギハラチウネ」その3
主人公の杉原千畝の描写も良かったですねぇ。
有能な外交官でありながら、悲運の人だったことが、しっかり伝わります。
満州で成果を上げたが、危険人物とみなされてモスクワ赴任は叶わない。
プロイセンでナチスドイツのソ連侵攻の情報を得るが、日本からは黙殺される。
ついに、最後の任地ルーマニアでの命令は「何もするな」。
祖国の危機に、外交官として何も出来ない悔しさは、どれほどかと。
それを表すシーンは、華やかな各国外交官の集まったパーティ。
美しく楽しげなワルツの踊りの中で、立ち尽くす杉原夫妻。
そこに、太平洋戦争の臨時ニュースから沖縄戦や本土爆撃までの映像が重なります。
涙も叫びも苦悶の表情もなしで、主人公の心の痛みがしっかり伝わります。
脇役も、みんな魅力たっぷり。
小日向文世演じる駐ドイツ大使とか、JTBの社員とか、ユダヤ人の祖父と孫とか。
小さなエピソードも、魅力たっぷり。
ピクニックに見せかけてドイツ軍の動向を探るとか。
名言「世界は大きな車輪のようなもの」とか。
挙げていくともう、キリが無いです。
最後に、気になった点をひとつだけ。
ドイツ人のかつての恋人の頼みで、アメリカへの亡命者にビザを発給します。
彼らは科学者で、亡命後原爆を開発し戦争の早期終結の道を開いたと、語られます。
うーん。
この映画は、あくまでフィクションです。
また、個人的には「歴史観」のような議論は避けたいです。
それでもねぇ。
ここは、少しでもヒロシマ・ナガサキにも言及して欲しかったですねぇ。
余談ですが、有名な「終戦を喜びキスをする水兵」のシーンも再現されていました。
というわけで。
いやー。良かったです。
メインのストーリーは当然「命のビザ」ですが、周辺のエピソードも名シーンが満載。
ことさら悲劇や緊迫感を強調しなくても、平易で丁寧な描写で深い感銘が得られる。
見て損のない映画だと思います
おまけです。
ユダヤ難民たちが、船から日本が見えた時に歌うユダヤ国歌「ハティクヴァ」。
映画の字幕とは違うでしょうが。
心の底で切望していた
ユダヤの魂はずっと求めて来た
そして歩き出した、東の果てへ
その眼は、ただシオンの地を見続けた
希望は未だ尽きない
二千年続いたその希望
自由のある私たちの国
シオンとエルサレムの国
自由のある私たちの国
それはシオンとエルサレムの国
杉原千畝夫婦が踊る、と言いますか。
日本敗戦のバックに流れる曲は、これで良いでしょうか。
ヨシフ・イヴァノヴィチの「ドナウ川のさざなみ」。
http://m.youtube.com/watch?v=JPX_1nowjSI
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