見てきましたが、、、、、映画「終わった人」
映画にとって、大切なものは何か。
それは、しっかりとした人物造形と、説得力のあるストーリー。
そんなことを再認識するような映画でした。
以下、映画全般にわたり、ネタバレと私のがっかり報告です。
この映画を見て良かったと感じた方、これから楽しみたいと思う方は、読まないでください。
舘ひろし演じる主人公は、こんな感じ。
岩手の高校ではラグビー部キャプテン
東大法学部を卒業し、メガバンクでは優秀な社員
出世競争に負け、子会社に出向し専務で定年退職
奥さんは美容師で、自分の店を持つ準備中
これはどうも、すごい経歴です。
メガバンク内では負け組でも、世間から見れば特上肝吸い付きの勝ち組でしょう。
定年退職の日から、映画はスタートします。
あの舘ひろしが、ださいスーツに猫背で太鼓腹
翌日から暇を持て余して、奥さんにも嫌がられる
公園、図書館、スポーツジムはジジババばかりでうんざり
再就職を目指すが、経歴が邪魔をして中小企業では相手にされない
定年後も顧問などの名誉職で残れるはずですが、まぁフィクションなので。
とにかく「定年後あるある」のコメディなのですね。
さあこの後は迷走です。
大学院で文学を学ぼうと決心
まずはカルチャースクールに通い、受付の広末と知り合う
スポーツジムで新興IT企業の社長と知り合い、顧問に就任
キャリアを生かして活躍し、大学院もカルチャースクールも中止
この前に「人生をやり直したい」なんて言っていました。
なるほど、あの発言はこの伏線だったのかと、納得です。
何か事情があって、文学を諦めて法学部に進んだのかも知れない。
そして今こそ、本当に学びたいことに向かって踏み出すのか。
そんな風に思いながら見ていました。
それから、広末さんの前で格好つけようとジムも頑張っていました。
ところが。
えぇー?
顧問の話が出て、大学院も広末さんも、あっさり放り出すのですか。
なんと、広末さんには「しばらくスクール行けません」というメールだけ。
あんなに熱を上げていたのに。
更に迷走します。
IT企業の社長が急死して、社長を引き受ける
広末さんからの電話で、後日熱海のホテルで会う約束をするが、惨敗
傷心の広末さんから、夜中に泣きながらの電話です。
すぐ駆けつけるのならまだしも、後日のお泊り前提のお誘いとは。
それはまぁ「一度お願いしたい」という気持ちは、よ~く分かりますよ。
だからと言って。
相手の弱みにつけ込んだら、それはもう、ただのエロジジイでしょう。
広末さんの悩みには、的確な助言をしていました。
なるほどとは思いましたが、下心ミエミエではね。
迷走はさらに続きます。
IT企業は、海外クライアントのトラブルで倒産
負債3億円を整理して、残った9000万円は社長個人が引き受ける
個人の資産で8000万円まで何とかしたが、ついに借金1000万円の一文無し
奥さん名義の自宅マンションや店の開店資金は無事だと言い訳しています。
そんな言い方では、奥さんが激怒するのは、当然でしょう。
えーと。
あれだけの経歴ですからね。資産数千万は当然かと思います。
それでもねぇ。
具体的にこんな金額が出ると、現実に引き戻されて一気にシラけます。
そもそも、有限会社や株式会社は「有限責任会社」です。
会社の負債を、社長個人が弁済する法的義務はありません。
この場合は、銀行からの借入金の連帯保証人になっていたのでしょう。
元銀行マンなら、社長就任時にリスクは分かっていたはずですが。
迷走はまだまだ続きます。
奥さんに家を追い出され、カプセルホテル
スポーツ新聞で、母校のラグビー部が県大会の決勝に進んだのを知る
岩手まで応援に行って、旧友たちと再開してどんちゃん騒ぎ
中の一人が震災復興NPOの代表者で、手伝ってくれと頼まれて承諾
奥さんとも仲たがい解消、二か月に一度岩手に会いに来ると
一方広末さんは、奥さんのイトコの恋人になっていた
その場その場の偶然で、流れ流れて。
結局は故郷に流れ着いて、めでたしめでたし。
借金1000万は、どうなったのでしょう?
自己破産したのか、NPOの収入から細々と返済するのでしょうか?
冒頭、太鼓腹猫背にダサいスーツで笑わせました。
ところがその後は、いつもの格好良い舘ひろし。
わずかなジム通いで、太鼓腹は簡単に引っ込んだのですかね。
これだけ見ても、すいぶんと安易な展開と感じます。
奥さんは、美容院の開店準備で忙しく過ごしていました。
ですが、それについては全く興味がない様子でした。
資金計画とか役所の手続きとか、経験を生かした協力も出来たでしょうに。
いやー。参りましたね。これは。
個々のシーンだけ見れば、笑ったり、しんみりしたり出来るんですよ。
大ボケのシーンが、何か所もあります。
サングラス姿で広末さんを待ち伏せ
お泊り作戦に失敗して、悔しがって枕をたたきつける
それはもう、あの舘ひろしです。何をしたって笑いが取れますよ。
もちろん、格好良く決めるのはさすが。
美しい共演者に加えて、文学のスパイスまで効かせています。
桜を眺め、良寛の辞世の句「散る桜 残る桜も 散る桜」なんてつぶやく
広末涼子さんと、岩手の方言で啄木や賢治について語り合う
黒木瞳さんと、桜の下で微笑みあう
それはもう、いかにも心地よい見応えのあるシーンになりますよ。
その他、小さなくすぐりやしんみりも満載。
自家用車クラウンのナンバーは49-89
笹野高史が髪の毛ふさふさで登場し、かつらを投げ捨てる
かつてのコーチが、今は老いて認知症
ですけどねぇ。
肝心の人物像は、ブレブレ。
ストーリーは、行き当たりばったり。
会社人間の定年後なんて、そんなモンだと言いたいのでしょうか。
等身大の人物や家族をしっかり描く、是枝裕和監督作品。
喜劇の名手の、山田洋次監督作品。
これらを見た後では、もうね。
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コメント
見逃した映画があるんです。
虎狼の血と友罪 の2本ですが観ましたか?
平日なら有るんですが土日はないよね。
投稿: のま | 2018年6月20日 (水) 18時05分
のもさん、どうもです(^^)
虎狼の血は、役所広司さんのすごい迫力のCMやってましたね。
あっという間に上映が終わったようで。
友罪は、ちょっと見てみたいですが、上映回数少ないですね。
MOVIXさいたまで、週末はレイトショー。
なかなかうまく行きませんね(^^;
投稿: 缶コーヒー | 2018年6月20日 (水) 21時49分