山田洋二監督と是枝裕和監督
先日の「万引き家族」について。
ありがたくも、のもさんからコメントを頂きました。
先行上映で見てきたそうです。
そういえば「DESTINY 鎌倉ものがたり」もそうでした。
いつも映画は先を越されているようで、さすがです(^^)
山田洋二の「家族はつらいよIII」の話も出ました。
ちょうど良い機会です。
常々思っていた、このお二方の対比について、ちょっと書いてみます。
まずは子どもについて。
是枝監督の映画には、子どもが重要な役回りで登場し、その演技が高く評価されています。
例えば2004年の「誰も知らない」。
柳楽優弥は、カンヌ国際映画祭で史上最年少日本人初の最優秀主演男優賞。
もちろん「万引き家族」も、幼い兄妹の自然な演技が素晴らしい。
一方、山田監督です。
こちらも、家族を題材にした映画が沢山あります。
ですが、私の知る限り、子どもが活躍するものはありません。
例えば「男はつらいよ」の満男くん。
赤ちゃんの時から登場しますが、その辺で遊んでいるだけ。
ストーリーに絡むのは、恋に悩む受験生になってからです。
最近の「家族はつらいよ」の子どもたち。
親の離婚の危機でも、セリフ棒読みでわざとらしく泣くだけ。
例外は「母と暮らせば」の本田望結ちゃん。
いかにもな名演技でしたが、私の感想は以前書いた通りです。
小津安二郎「東京物語」や山田監督リメイクの「東京家族」でも、子どもはホンの添えもの。
あぁ、これですね。
いかにも「昭和初期のお父さん」の感覚というように、私は感じます。
次に、名前について。
是枝監督は、相当なこだわりがあるようです。
今回の「万引き家族」の一家に名前は、みな偽名です。
息子?の名前の「祥太」は、実は父?の本名。
自分の名前を付けて可愛がっています。
不遇だった自分の人生を、取り返すような気持なのでしょう。
主人公の名前は「りょうた」。
歩いても歩いても 阿部寛 横山良多 2008
ゴーイング マイ ホーム 阿部寛 坪井良多 2012(テレビドラマ)
そして父になる 福山雅治 野々宮良多 2013
海よりもまだ深く 阿部寛 坪井良多 2016
ウィキペディア「海よりもまだ深く」によれば、是枝監督の学生時代の友人の名前とのこと。
監督ご自身の投影なのでしょうか。
一方山田監督は、かなり無頓着のよう。
「男はつらいよ」では、こんな感じ。
第1作は冬子、第2作は夏子、第4作が春子。
第36作の小学校の真知子先生に続き、第40作の女医さんがまた真知子先生。
意識して遊んでいる例もありますが。
1976年の第16作「葛飾立志編」では、小林桂樹が田所という大学教授として登場します。
これは、1973年の「日本沈没」小林桂樹の田所博士そのまま。
「家族はつらいよ」の小林稔侍さん。
一作目ではあやしい探偵の沼田、二作目では交通誘導の丸田、今回は医者の角田として登場。
最後に、性的描写について。
是枝監督「万引き家族」では、妹?が姉?に尋ねます。
ねぇ、いつしてるの?
そうですよね、あんな狭い家ですからね。
観客である私も、そう思いました。
その質問は、はぐらかしていましたが。
真夏の昼下がり、二人でお昼にお蕎麦を食べていて、急にその気になって。
済んだ後に、子どもたちが帰ってきて大慌て。
「海街diary」では、オープニングで次女がカレと二人で朝を迎えるシーン。
これは原作通り。
これが夫婦や恋人同士のリアルな日常というものでしょう。
一方、山田監督作品には、ほとんど性的描写はありませんね。
例えば「男はつらいよ」。
第29作では、寝ている寅次郎の元にいしだあゆみ。
第44作では、吉田日出子さんと良い感じ。
もちろん、それ以上は何の進展もありません。
例えば「遙かなる山の呼び声」。
深夜に倍賞千恵子の部屋に来る高倉健。
緊張する倍賞さんに、、、「奥さん、牛が大変だ」。
例えば「小さいおうち」。
浮気をする松たか子の、鏡を見る目の色っぽいこと。
帯留めの結び方で、それに気付く黒木華。
こんなもんです。
日常のリアリティを描いて定評のある是枝監督。
日常生活を舞台にしながらも、喜劇の名手の山田監督。
比較しても仕方ないことでした。
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コメント
缶さん
私が先を越すなどとんでもない。たまたまです。
この世界の片隅に、レディプレイヤー、オデッセイなどこのブログで紹介されて観ています。
それに私は観るだけです。
また良いのが有ったら紹介してください。
期待してます。
投稿: のも | 2018年6月19日 (火) 07時33分
のもさん、どうもです(^^)
バイクにも乗らず、座りっきりであれこれしています(^^;
ちょうど、世代的には気になる「終わった人」という映画ががありますよね。
これを見てきたのですが、、、ちょっと残念でした、、、
投稿: 缶コーヒー | 2018年6月19日 (火) 21時40分