古い本棚「赤ずきんちゃん気をつけて」四部作 庄司薫 その3
先日買い直した本を、読み終えました。
この「白鳥」は、四部作で唯一の「死」をテーマにした作品です。
いつもは勝気で元気で生意気な、幼馴染の由美さん。
この頃、妙にしおらしい。
先の小沢さんのお祖父さんは、今は死の床の中。
由美さんは、その「滅びゆく生」に魅了されていく。
まるで「白鳥の歌」に耳をすますように、、、
お祖父さん本人の描写は一切なく、小沢さんや由美さんから語られます。
若い薫くんたちには、到底たどり着けないような知識人。
自分にはどうすることも出来ない「死」に対峙する薫くん。
緊迫したラストシーンが素晴らしい。
一人称小説は良いですね。
もう大昔になってしまった「あの頃」に戻ったような気分です。
話変わって。
昨年話題になった「おらおらでひとりいぐも」。
著者は63歳の若竹千佐子という方。
出版元の紹介は、こんな感じ。
74歳、ひとり暮らしの桃子さん。おらの今は、こわいものなし――
新たな「老い」を生きるための感動作。
青春小説の対極、玄冬小説の誕生!
第54回文藝賞、第158回芥川賞受賞作。
薫くんのような「青春小説」に対して「玄冬小説」だそうです。
陰陽五行説による四季の表現「青春・朱夏・白秋・玄冬」からの新語。
先日の「チコちゃんに叱られる!」でも取り上げられていました。
この中で普段目にするのは「北原白秋」くらいでしょうか。
先の薫くんと同じ、芥川賞受賞作というだけですが。
共通点はそれだけですね。
首都圏の新興住宅街で2児を産み育て、15年前に夫に先立たれて。
息子と娘とは疎遠になり、、、
帰るところは、ふるさと東北訛りの言葉。
宮沢賢治の短編童話「虔十」が出てくるので、岩手なのでしょう。
あぁ。
今の私は実年齢も心も、こちらの方がずっと近くなり、深く心に染み込みます。
暗い話になってしまうのかと思ったら。
最後にいくばくかの救いがあるのが、ありがたいところでした。
| 固定リンク
「古い本棚」カテゴリの記事
- 筒井康隆 小説「敵」読了(2025.01.17)
- 筒井康隆 小説「敵」読了 その2(2025.01.18)
- 山形県鶴岡市来訪記念「藤沢周平」(2024.12.25)
- 「マイティジャック」私の思い違い(2024.12.19)
- Web漫画サイト 早川書房「ハヤコミ」(2024.11.11)
コメント