見てきました! 映画「おらおらでひとりいぐも」
この映画は、見に行くかどうか、迷いました。
映画は何のために見に行くのでしょうか?
例えば、宇宙の彼方の大冒険や絶世の美女との大恋愛。
更には、個人の視点を超えて歴史上の大事件を俯瞰的に眺めたり。
そんな「疑似体験」を、楽しみにいくわけですよね。
で、この映画です。
主人公は70代の女性。子どもは巣立ち、夫には先立たれて一人暮らし。
そんな人生を、わざわざお金を出して疑似体験して、どうする。
私自身がこうなるのも、そう遠くはなさそうですし。
同名の原作小説は、以前読んで好印象でした。
2019年5月27日 (月) 古い本棚「赤ずきんちゃん気をつけて」四部作 庄司薫 その3
74歳、ひとり暮らしの桃子さん。おらの今は、こわいものなし――
新たな「老い」を生きるための感動作。
青春小説の対極、玄冬小説の誕生!
第54回文藝賞、第158回芥川賞受賞作。
一人暮らしの生活に、自分の「寂しさ」の分身が何人も現れる。
そんな一人称の小説を、どう映像化するのか。
一応、見ておきましょう。
というわけで。
シネコンのあまり広くない劇場で、観客は30~40人くらい。
ほとんどが、私や主人公に近い年齢の方。
さて始まりました。
桃子さん。
単調な一人暮らし。
図書館に歴史の本を借りに行ったり。
ネズミの物音が聞こえたり。
そのうち「寂しさ」が実体化。
三人の男の姿で、わいわいと部屋の中に現れます。
ふすまが開いて派手なバンド演奏が現れたりする、シュールな絵柄。
一念発起して、お弁当持ってお墓参りに出かけたり。
若いころの思い出のシーンもたびたび登場。
後半には、今の生活と重ね合わせて、おばあちゃんの思い出。
そして最後は。
小学生の孫娘が、布製の人形を直してくれと一人で訪ねて来ます。
孫娘もふざけて方言で会話したり。
原作を引用します。
「さやちゃん、この人形に新しい服作ってやるべが」
「作るべし作るべし」
今の生活と対比した思い出のシーンに、しみじみしたり。
シュールな描写は、これはもう認知症の初期でしょう、なんて思ったり。
ラストは、先のような「孫オチ」で、いささか安直な印象。
エンドロール。
男三人の役名は「寂しさ1~3」。
これは順当なのですが。
朝の布団の上に現れる男の役名は「どうせ」。
あぁ、こう来ましたか。
原作を引用します。
どうせ早く起きても何もすることもないのだし。
おんなじことの繰り返しだし。
目覚めた時からどうせどうせのオンパレード、そんなときもあるさ、仕方ながんべさ、
最後の最後に、ちょっとやられました。
上映時間は143分。いささか長くて単調ですが。
ある程度の年齢の人なら、自分の人生に重ねて心に響くシーンもあるでしょう。
映画自体の感想からは離れますが。
わが身に引き寄せて、これからの時代を考えれば。
桃子さん、相当にマシな方ではないかとも、思ってしまいます。
腰痛はあるが、図書館や墓参りに困らない健康状態
まだまだ痛みの少なそうな、戸建ての持ち家
新車の軽自動車をリースできる経済環境
図書館員も顔見知り、長年住み慣れた町
お金の無心はするが、娘や孫は近くに住んでいる
孫が自分の意思で一人で訪ねてくる
このような外形的なことがらは、比較することはできますが。
悲しさ苦しさ寂しさ。
心の痛みは、他者と比較のしようがないのは、分かっていますが。
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