読了です 原作小説「山本周五郎 赤ひげ診療譚」
黒澤明の映画「赤ひげ」を見て、原作を読み返しました。
青空文庫に上がっている、山本周五郎の小説「赤ひげ診療譚」です。
あらすじは、先日の映画と同じです。
保本登(加山雄三)は、幕府の御番医になるため、三年の長崎遊学を終えて江戸に戻ったものの、
配置されたのは、貧しく重い病に苦しむ患者たちが集まる小石川養生所だった。
所長の“赤ひげ”(三船敏郎)の下で働くことになった保本は、ことあるごとに赤ひげに反発する。
だが、死を目前にした患者を前に「現在我々に出来ることは貧困と無知に対する戦いだ。
それによって医術の不足を補う他はない」と語る赤ひげに畏敬の念を抱き始める―。
アマゾンで確認すると、新潮文庫で384ページ。
平日の職場での昼休みの楽しみに、少しづつ読み進めるつもりだったのですが。
雨の週末に、読み切ってしまいました。
短編8作の連作小説です。
これがもう、気の毒な患者ばかり。
一作目は、幼い頃の性被害により「狂女」となった、裕福な商家の娘。
他はもう、貧乏人ばかりです。
貧困の連鎖を断ち切ろうと、親子で一家心中。
子どもたちは死んで、両親だけ助かってしまいます。
母親の言葉です。
「どうしてあたしたちを死なしてくれなかったんでしょう」
「生きて苦労するのは見ていられても、死ぬことは放っておけないんでしょうか」
親に食い物にされている娘もいます。
幼くして商家に奉公に出され、そのうち岡場所に売られてしまう。
それを免れるため、偶然怪我で頭を打ったのを機会に「ばか」になったふりをする。
などなど。
何の救いも無いような話もありますが、一方でとぼけた悲喜劇もあったりします。
現実逃避のあまり、幻の高価な鶯を眺めて暮らす男とか。
また、赤ひげや登の抱える事情も、徐々に明らかになります。
長崎への遊学中に婚約者に裏切られた登は、より良い相手にめぐりあいます。
そして、出世よりも小石川養生所に残ることを選びます。
おれは幸運だった、まさをは決して眼に立つ美貌ではない、だが時の経つにしたがって、しだいにその美しさがあらわれるようだ。
ちぐさの美貌は咲き誇る花の美しさであり、幹や枝は花を咲かせる役でしかなく、花が盛りを過ぎ、散ってしまうと、幹や枝のなりはひと際すがれてみえる。
まさをは花こそつつましいが、幹も枝もすくすくと伸び、成長するにしたがって本当の美しさが磨きだされる。
片方を花の木とすれば、片方は松柏の色を変えぬ姿に比べられるだろう。これこそ一生の妻にふさわしい女だ、と登は思った。
良いですねぇ。
なんだか少し、私まで「善人」になったような気がします。
コピペばかりで、長くなってしまいました。
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