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2022年12月 9日 (金)

見てきました! 午前十時の映画祭12「蜘蛛巣城」その2

2022年12月3日(土)です。
懐かしの名作映画の上映企画「午前十時の映画祭」で、黒澤明「蜘蛛巣城」を見てきました。
2022年12月3日(土) 見てきました! 午前十時の映画祭12「蜘蛛巣城」

黒澤映画の中で「蜘蛛巣城」は、いささかアレだと思うのですが。
どこがどうアレなのか、一応書いておきます。

お城と周囲の森について。
お城の周囲は、慣れない人は迷ってしまうほどの深い森「蜘蛛手の森」に囲まれています。
このことから、お城は「蜘蛛巣城」と言われています。

映画冒頭、騎馬の武将、鷲津武時(三船敏郎)と三木義明(千秋実)が慣れているはずの森で迷います。
二人が森の中を馬で駆け抜けるシーンが続きますが。
残念。
そこが「城を囲む深い森」であることは、二人のセリフで説明されるだけ。
俯瞰的に、森と城の位置関係を表すような描写があれば良いのに。

その後「蜘蛛巣城」に到着。
迫力ある大規模なセットですが。
残念。
霧が立ち込め、周囲は草一本生えていない荒野です。
私には「深い森に囲まれた城」というようには、感じられません。
Kumo_1_202212

森の中で「謎の老婆」が二人の未来を予言します。
老婆は「蜘蛛手の森が動かぬ限り、戦に敗れることはない」と語ります。
これは「間違いなくそうなる」という、良くある例え話のように聞こえます。
これが、ラストの「森が動く」シーンの伏線になっています。
Kumo_2_202212

最後に、鷲津武時は「森が動く」様子を見て、恐れおののきます。
実は、三木義明が森の木を切り盾の代わりにして攻め込んできたのです。
残念。
動く前の森の俯瞰的な描写がないので「動く前の森」と「動き出した森」が対比できません。
ですので、見ている私には「森が動く」衝撃が、あまり伝わりません。
Kumo_3_202212

黒澤映画の見どころと言えば、大軍勢の合戦シーン。
この映画では、ほとんど出てきません。
冒頭の戦のシーンは、殿さまや武将の前に伝令が次々と駆け込んで、戦況を報告するだけ。
ラストでも、大軍勢が激突するような描写はありません。
鷲津武時がただ一人、飛んでくる矢から必死に逃げ回るだけ。
Kumo_4_202212

というわけで。
他にも、能面のような鷲津武時の妻の浅茅など。
固定の舞台セットで、俳優個人が主にセリフと身振りで話を進める。
そんな「舞台劇を映画に翻案した」作品なんですね。
前作「七人の侍」や次作「隠し砦の三悪人」のような「痛快娯楽時代劇」とは異なるジャンルの作品と考えるべきなのでしょう。

更に言ってしまえば。
「面白い映画」ではなく「見るべき映画」というような。
今の選考委員の「したり顔」が、思い浮かんでしまうような。

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