浪曲「真柄のお秀」雑考
先日の「神田連雀亭」での「真柄のお秀」について。
この演目は、私は今回初めて知りました。
思うところがありましたので、書いておきます。
まずは、池波正太郎「剣客商売」の登場人物との類似について。
この演目の主人公「お秀」は、このような人物です。
・身長六尺余体重三十五貫という大女で、化粧もしたことのない十八歳
・伊勢参りの途中でこの宿に泊まったが、母親が病で亡くなる
・世話になったお礼として、この宿で働いている
・身の上は分からないが、武芸の嗜みもあり、才智あり機転も利く正直者
・酒の席での「嫁に欲しい」を真に受けるほど、うぶで純情
なるほど。
池波正太郎「剣客商売」には、こんな登場人物がいます。
「杉原秀」(第五巻・手裏剣お秀)
・事情があり脱藩した剣術師範の娘
・父を亡くし、一人で道場を守る手裏剣の名手
・見た目は農婦のようだが人格高潔
「おせき」(第三巻・深川十万坪)
・深川で升酒屋を営む「金時婆さん」
・荷車から落ちた米俵を、ひょいひょいと荷車に積み直してしまう怪力
・若い頃から苦労を重ね、人情に篤い
「千代乃」(第三巻・婚礼の夜)
・出羽本庄藩江戸藩邸の武具奉行の娘
・醜女というのでもないが、だからといって美女には遠すぎる
・体格が立派で、縦にも横にも量感がありすぎる
・だが、肌の色はぬけるように白く、細い眼はやさしい光をたたえ、性質は温順そのもの
様々な点で今回の「真柄のお秀」に似ています。
池波先生、このような古典芸能からも、人物像の着想を得ていたのかも知れません。
次に、当日の観客について。
観客から笑いが起きたのは、次のようなシーンです。
・関内はお秀に「嫁にする」と軽口をたたく
お秀がそれを真に受けたのに驚き、夜中に宿を抜け出す
・一年後、お秀が伊勢から越前まで押しかけてくる
驚いた関内は、使用人に後を任せて屋敷から逃げ出す
容姿に問題のある女性の、純粋な気持ちからの行動を笑う。
まさに「ルッキズム」ですねぇ。
観客は男性がほとんど。
年齢層は、言うまでもありませんね。
テレビで古い番組などの放送時に、こんな感じの表示が出ます。
「時代背景や作者の意図を尊重しオリジナルのまま放送します」
寄席でも同様の表示が必要だ、なんて思いつきましたが、、、
ルッキズム解消には、全く関係ないですね。
古典に対して、現代の視点で文句をつける。
野暮は承知してはいますが。
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