遅ればせながら。
2024年5月24日(金)公開の映画「関心領域」です。
入場特典は絵葉書3枚。
公式サイトのキャッチコピー。
アウシュビッツ収容所の隣で幸せに暮らす家族がいた。
公式サイトから概要も抜粋。
空は青く、誰もが笑顔で、子供たちの楽しげな声が聴こえてくる。
そして、窓から見える壁の向こうでは大きな建物から黒い煙があがっている。
時は1945年、アウシュビッツ収容所の所長とその妻ら家族は、収容所の隣で幸せに暮らしていた。
スクリーンに映し出されるのは、どこにでもある穏やかな日常。
しかし、壁ひとつ隔てたアウシュビッツ収容所の存在が、音、建物からあがる煙、家族の交わす何気ない会話や視線、そして気配から着実に伝わってくる。
壁を隔てたふたつの世界にどんな違いがあるのか?
平和に暮らす家族と彼らにはどんな違いがあるのか?
そして、あなたと彼らとの違いは?
感想をざっくりまとめれば、こんなところでしょう。
身近に起こっている悲劇を、他所事として無視する様子が恐ろしい。
観客である私たちも、同じことをしてはいないか?
オープニングでびっくり。
1~2分間ほど画面は真っ暗で、どよーんと暗く重い音楽だけ。
その後は、アウシュビッツ収容所の所長一家の快適な暮らしの様子が描かれます。
以下、ピクニックやパーティの様子の間に描かれる、印象的なシーン。
所長の妻は、どこからか持ってきた洋服を使用人たちに分け与える。
自分は、毛皮のコートを鏡の前で羽織ってみる。
更に、ポケットに入っていた口紅を着けてみる。
所長の妻のお母さんが、泊りにやってくる。
妻の自慢の庭を見たりして過ごすが、置手紙を残して帰ってしまう。
妻は、その置手紙をちらっと見て、かまどに放り込む。
所長は、部下と共に新しい「処理施設」の検討。
ちらっと図面が映ります。
複数の焼却炉を持ち「搬入~焼却~冷却~搬出」の作業工程を連続して行える。
私が以前見てきた「ホフマン式煉瓦窯」のような構造らしいです。
・2017年2月18日(土) 行ってきました「旧下野煉化製造会社煉瓦窯」
所長は昇進し異動になる。
妻は、気に入っている今の家から引っ越す気はなく、単身赴任。
その他にも、怪しいシーンもいろいろありますが。
途中何度かモノクロ反転画像で挿入される、レジスタンスの少女。
夜中に土木作業現場に忍び込み、シャベルの陰に一個づつリンゴを置いたり。
映像としては、キレイな庭の向こうに高い塀。
その先の高い煙突からは、煙が立ち上っているだけ。
怖いのは音響です。
常に聞こえている、何やら叫び声や赤ちゃんの泣き声や銃声のような音。
この家の赤ちゃんも、よく泣いていましたが。
そしてラストです。
いきなり現代に飛びます。
保存された収容所の、歴史を伝える展示施設。
ガラス越しの大量の靴などが映ります。
そこで、淡々と掃除をしている職員たち。
失礼してネットから拝借。
これのようです。
https://www.jiji.com/jc/d4?p=asw024-IMG_2013&d=d4_oldnews
![Zoneof_2_202406 Zoneof_2_202406](https://xelvis.cocolog-nifty.com/blog/images/zoneof_2_202406.jpg)
いやー怖いです。
映像より音で感じる恐怖という意味では、この映画を思い出しました。
・2021年7月21日(水) 見てきました!!! 映画「シャイニング」
事実の重みを伝える本作に対し、このような作品を持ち出すのは、不謹慎でしょうか。
更に話をそらしてしまいます。
無念の思いを映像や音響で表すという意味では、こんな表現もありましたっけ。
・2015年12月18日(金) 見てきました 映画「杉原千畝 スギハラチウネ」その3
華やかな各国外交官の集まったパーティ。
美しく楽しげなワルツの踊りの中で、立ち尽くす杉原夫妻。
そこに、太平洋戦争の臨時ニュースから沖縄戦や本土爆撃までの映像が重なります。
涙も叫びも苦悶の表情もなしで、主人公の心の痛みがしっかり伝わります。
いやー、怖いです。
と言いながら、映画を見終えれば、平凡な日常に戻る私。